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青島今昔 〜その7〜

「南国」の“まなざし”と共在の島(日向の青島)
長谷川 司

近代、青島は「南国」として発見された。

地理学者、志賀重昂は、青島に「世界最奇の風景」をみた。
芭蕉が花開き、実を結ぶ。
熱帯の植物が茂り、ビロー樹の林が広がる。
かと思えば、クロ松の大木がそびえ、古廟が鎮座する。

温帯と熱帯の植物そして神社がともにある。
志賀が誇張まじりに伝えたのは、青島の多様性であった。

かつての青島を特徴づけたのは、その“遠さ”であった。
入島が限られ、対岸から遥拝された。
近寄りがたく、他所にはない植物が生える。
青島は神秘の島であった。

それが大正ともなれば、大勢の人々が訪れる。
島が“近づいた”というのが、当時の感覚である。

軽便鉄道の旅人には、文人や学者もいた。
文人にとって、青島は、詩や文学の源となった。
そして学者たちは、島を調べていった。

得体の知れない植物は、数えられ、選別され、分類された。
植物はほかでもない、より“南”の地域に生える草木である。
熱帯植物であるという。熱帯すなわち「南国」である。

数多の風物から取捨選択し、
熱帯植物の眼に見える形(イメージ)に注目する。
こうした見方を「南国」の“まなざし”と呼ぼう。

「南国」の“まなざし”は、観光写真や絵はがきで拡散された。
とはいえ、「南国」とは、小さな島のごく一面に過ぎない。
青島にはいくつもの風物があり、あらゆる人々が行き交う。
今も変わらず、現実の青島は、“共在”の島である。

絵はがき「日向青島全景」


絵はがき「(日向青島)大自然の妙技、青島周囲に見る岩礁群」大正写真工芸所


絵はがき「日向青島 摂政宮殿下御休憩所ト青島神社」


絵はがき「(日向)青島神苑海岸のビラウ樹」