Discover Aoshima’s history 青島今昔 〜その7〜 2023.08.07 「南国」の“まなざし”と共在の島(日向の青島) 長谷川 司 近代、青島は「南国」として発見された。 地理学者、志賀重昂は、青島に「世界最奇の風景」をみた。 芭蕉が花開き、実を結ぶ。 熱帯の植物が茂り、ビロー樹の林が広がる。 かと思えば、クロ松の大木がそびえ、古廟が鎮座する。 温帯と熱帯の植物そして神社がともにある。 志賀が誇張まじりに伝えたのは、青島の多様性であった。 かつての青島を特徴づけたのは、その“遠さ”であった。 入島が限られ、対岸から遥拝された。 近寄りがたく、他所にはない植物が生える。 青島は神秘の島であった。 それが大正ともなれば、大勢の人々が訪れる。 島が“近づいた”というのが、当時の感覚である。 軽便鉄道の旅人には、文人や学者もいた。 文人にとって、青島は、詩や文学の源となった。 そして学者たちは、島を調べていった。 得体の知れない植物は、数えられ、選別され、分類された。 植物はほかでもない、より“南”の地域に生える草木である。 熱帯植物であるという。熱帯すなわち「南国」である。 数多の風物から取捨選択し、 熱帯植物の眼に見える形(イメージ)に注目する。 こうした見方を「南国」の“まなざし”と呼ぼう。 「南国」の“まなざし”は、観光写真や絵はがきで拡散された。 とはいえ、「南国」とは、小さな島のごく一面に過ぎない。 青島にはいくつもの風物があり、あらゆる人々が行き交う。 今も変わらず、現実の青島は、“共在”の島である。 絵はがき「日向青島全景」 絵はがき「(日向青島)大自然の妙技、青島周囲に見る岩礁群」大正写真工芸所 絵はがき「日向青島 摂政宮殿下御休憩所ト青島神社」 絵はがき「(日向)青島神苑海岸のビラウ樹」